ビスケットについてクールに語るオレ(by漱石)。

嵐山光三郎の「文人悪食」を読みました
芥川龍之介から池波正太郎まで、文豪たちがどんな食べ物/食事を好んだか?という観点から、「文士達37人にオルタナティヴなスポットライトを当ててみたよ!」という本で、大変興味深く拝読いたしました
ワタクシは勉強不足なので、この本で紹介している文豪たちの著作の大半を読んでいないのですが、それでも楽しく読めました。もうホントに「クセがある」どころではなく、揃いも揃って変人ばかりなのですが、でもそうでもなきゃあ世に名を残す読み物なんか書けねえよなぁ、と改めて思いました
石川啄木はケチでわがままなイヤな奴(↑画像は嵐山氏画の啄木)」「宮沢賢治は妹を想っていた」「岡本かの子この容姿で旦那(太郎の父)の他に若い愛人二人をはべらす」「高村光太郎&千恵子の絶倫ライフ@山荘」とか、食に関連して彼らの様々な側面、嗜好やら性癖やらを浮き上がらせる構成が絶妙で、未読の作品を「読んでみたい!」という気にさせてくれます。が、ここから実際に「読みたい!」で終わることなくちゃんと買ったり図書館で借りたりして読むか否かに、その人の勤勉さとか、人生における文学の比重とか、そういったモノが表れるような気がします(ワタクシはと言えば…)。巻末にはこの本を執筆するにあたって嵐山氏がDIGした文献一覧が掲載されているのですが、その夥しい量にただただ唖然とするばかりです
個人的に面白かったのは種田山頭火。嵐山氏は山頭火のことを「『さすらいの俳人』というイメージとは裏腹に、ガンガン喰ってガンガン呑む、したたかな欲の人である」と解説します。放浪のところどころで庵を結ぶと俳句仲間が酒や食事を持参しては集まるが、そのうちたかり上手な山頭火に呆れた仲間は庵を離れ、それを見計らって今度は山頭火自身が庵を捨てる、ということを繰り返した、とのこと。「〜夜にどこからともなくついて来た犬、その犬が大きい餅をくわえて居った、犬から餅をご馳走になった。/ワン公よありがとう」「帰庵すると御飯を野良猫に食べられていた。けさは猫の食べのこしを食べた」という彼の日記を引用し、山頭火のこんな一句で結んでいました


「秋の夜や犬から貰つたり猫に与へたり」


イイ歌!!

文人悪食 (新潮文庫)

文人悪食 (新潮文庫)