es[エス] を観ました。
木曜洋画劇場にて。看守と囚人、という役割を与えると、人はどの様に変化するか?というスタンフォード大学で実際に行われた実験を元に作られた作品です。実際の実験では「看守はどんどん支配的に抑圧的に」「囚人はどんどん受動的に服従的に」と変化、挙句には攻撃的過ぎる看守側に囚人側が耐えかね重度の情緒不安定に陥り、当初2週間を予定していた実験も6日で中止になりました。「es」は「もし6日目以降も実験を続けていたら…」という所に着想を得ています。
この「支配者/被支配者」という構図は非常に興味深く、看守側と囚人側、それぞれに登場するリーダー格の人物がこの構図をより明確にしています。つまり、与えられた役割の中にビタっとハマってしまった人物がそれぞれ「お前らナニ勝手なことしてやがる!」「お前にそんなことを言われる筋合いはネエ!」とイニシアチブを取る事となるのです。これは画像の人↑にも言えることでしょう。言ってみれば彼は与えられた役割を全うしようしているだけなのです。しかしながらその「全うしようとしていること」が、コチラにとっては「余計なお世話」以外の何者でもないのですが。
深夜のファミレスで友人と慎太郎の事を話していた時、彼はこう言いました。「きっと慎太郎は怖くて仕方がないのだ」と。
外国人?!何するかわかったもんじゃない!合法ドラッグ?!ドラッグに合法もクソもないだろう!少子化?!イイ歳こいて結婚もせず子供を生まない女が増えてるからだろ!若年層に性病蔓延?!コンビ二なんかで手軽に読めちゃうエロ本から間違った情報を得ているからだろ!・・・
もう自分が「それは問題だ!」と思ったことには対処するか言及するかしないと居ても立ってもいられない。でも困ったチャンなのは、いざ行動に起こせば根本を見据えず一方的な対処療法ばかり。それがまた下手に「裕次郎の兄貴」っていう冠があったりしちゃったりするモンだから、上澄みしか見てないオバちゃんたちからは「んまぁ!有言実行の男!」と支持を得てしまう。こうして彼はまた新たな問題を見つけ出しては「けけけ!けしからん!!」となるわけです。
「es」のラストには「支配者/被支配者」の避け難い衝突が待っています。囚人側のリーダーに取り押さえられ、看守側のリーダーはこう言います。「お前が…お前がいたからいけないんだ!」この台詞はドイツ人の俳優が発した台詞ではなく、イキリ勃ったイチモツで障子を突き破るという妄想にふける男の台詞に聞こえてなりませんでした。