セロニアス・モンク「ストレイト、ノー・チェイサー」を観ました。


レジェンダリーなピアニスト、セロニアス・モンクドキュメンタリー映画です。
画像を見て頂ければわかると思いますが、モンクはこんな人です。帽子には独自のこだわりがあるようです。ゴツイ指輪をいくつもはめて全ての指を真っ直ぐ伸ばし、弾くというよりは鍵盤を叩いています。
菊地成孔氏の東大ゼミでも、「アルバート・アイラーという統合不全の天才」という話の流れでモンクについても触れていました。で、その話にあったように、ステージでホントにクルクル回っていました。それも演奏中に突然ピアノから離れ、ステージ中央でとても楽しそうにクルクルと回るのです。ステージだけではなく、空港でもクルクルクルクルと回り、突然カンフーのキメのようなポーズで「ビタっ」と止まってみせたりします(散々回った後、自分の三半規管の強靭さをアピールする竹中直人のように「真っ直ぐ歩ける!」と歩き出しこそしませんが)。
レコーディングの場面で面白かったのが、演奏を突然止めたモンクが「今のテイクを聴かせてくれ」と言い出し、プロデューサーは「え?練習してからっていうから録ってないよ」 M「いいから聴かせてくれよ」 P「だから録ってないって」 M「録るっていうから演奏したんじゃないか」 P「いや、録音はこれからだよ」 M「いいから聴かせてくれよ。何で聴かせてくれないんだ」 他のメンバー「だから録音してないんだよ!」 M「(所在なさげにブラブラしながら)・・・何で聴かせてくれないんだ・・・ブツブツ」とかこんな感じ。まわりの人たちはさぞ大変だったことでしょう。
奥さんのネリーの話も出てきますが、どんなモンクの奇行にも彼を見捨てることなく陰で支え続けた、というくだりが中々泣けます。ネリーさんのような人が世界中にもっと沢山いれば、争い事もなく色々な事に寛容な世の中になったはずだと思いました。
天才は人をイライラさせる。またもやそれを再認識させられた作品でした。