「ハンテッド」を観ました。
日本でもようやく「トロ様」なんていうニックネームと共に人気が出始めたベニチオ・デル・トロですが、自分がこの人を知ったのは「ユージュアル・サスペクツ」に出演した頃。「チンピラ役、っていうのはわかるけど外人なのにパンチパーマ!しかも眉毛もバッチリ整えて開襟シャツかよ!」ってのが非常にツボで、以降注目していた俳優さんなのです。
その後のトロ様のチョイスというのも、バスキアの友人役だったり、「ラスベガスをやっつけろ!」のドクターゴンゾだったり、「誘拐犯」(大傑作!)の相棒役だったりと、どれも変な役ばっか。そんな彼も「トラフィック」では見事オスカーを獲得。メジャーでの知名度も一気にアップしたはずなのに、ショーン・ペン監督作「プレッジ」ではまたまた変なチョイ役で楽しませてくれるとか、多分サービス精神旺盛な非常にイイ人なんだと思います(でもスカーレット・ヨハンソンとエレベーターの中で駅弁かましたようですが…)。
で、「ハンテッド」です。簡単な内容を説明すれば「コソボ紛争でシルバースターを受けた英雄が戦争後遺症で精神を病み暴走する」というお話で、「紛争における大量殺戮→ノイローゼ→殺戮トレーニングの回想→暴走」という過程を気持ち良いぐらいに潔く30分程度でサラっと簡潔に描いてみせるウィリアム・フリードキン(a.k.a.ドキンちゃん)の演出&編集が素晴らしく、その監督の意図を見事に昇華してみせるデル・トロの演技も素晴らしいです。近年は作品に恵まれずダメダメだったドキンちゃんが久々に放った快作と言えるでしょう。デル・トロの魅力の一つに「無表情で変なことをやる(おそらくアドリブ)」という点があり、別になんて事ないちょっとした「突然中指を立てる」といった動きが異様に面白かったりして、これって誰かっぽいなぁ〜と思い返してみれば、それは松田優作ではないか?という気がします。
クライマックスには、男子なら観ていて思わずティンポの付け根がヒリヒリしてしまうような、元教官役のトミー・リー・ジョーンズとの痛々しいナイフバトルもありますので、そちらも必見です。