「はてなダイアラー映画百選」

32番目のバトンを頂きました。厳粛に参りたいと思います。


作品名 「 救命士(Bringing Out The Dead) 」 1999年 監督 マーティン・スコセッシ


よく人と話していて「1番好きな監督は?作品はナニ?」って聞かれると本当に困るんですが、そこそこ映画の趣味が合うような人には


「1番好きな監督はマーティン・スコセッシで1番好きな作品は『グッドフェローズ』」


って答えることにしています。


で、本当は「グッドフェローズ」を取り上げようと思ったんですが、
「ここがスゲエあそこがスゲエ・凄え凄え・エンドロールにシド・ヴィシャスの『マイ・ウェイ』が・・・」
とか、大してオモロイ事を言えなそうなんで、同じくスコセッシの「救命士」を取り上げることにしました。


http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=159703


否定的なコメントが多くてビックリしたんですが、やっぱりみんなスコセッシと言えば「タクシードライバー」なんですね。


「救命士」のあらすじは上記のページを参照していただく事にして、確かにこの映画も「タクシードライバー」なんですよ。
でも大きく異なるのが監督のスコセッシと脚色のポール・シュレイダーの、作品に対するスタンス。
「救命士」は、スコセッシとシュレイダーが「タクシードライバー」という作品を振り返り
「もはや我々は、あの頃の我々を笑い飛ばすことができる!」という懐の広さを体現している「コメディ」なのです。


聞くところによるとポール・シュレイダーは、タイプライターの横に銃を置きながら「タクシードライバー」を執筆したらしいです。
スコセッシも短期間での撮影を余儀なくされ、全カットの絵コンテを用意して撮影に挑んだそうです。
デ・ニーロはいわずもがな、毎回毎回、その役にDOPEに自己投影してしまうことで有名な人です。


つまり、映画のキャラクターも、製作側も、お互いにテンパッてた。


「救命士」がどういう作品かと言えば、人間的な余裕もスキルも増した二人のオッサンが、
ユーモアという重要な要素を従えて再度挑んだ「タクシードライバー」なのです。


もちろんそこには「タクシードライバー」のような「テンパっていたからこそ生み出せた」テンションは存在しません。
再現も不可能でしょう。でもそれで良いのです。


「救命士」では主人公はテンパっていますが、演じるニコラス・ケイジを含め、製作側は非常にリラックスしているような印象を受けます。
カメラにはロバート・リチャードソンという名手を迎え(「キルビル」2作も素晴らしかったなぁ)、
思いつくありとあらゆるカット割りを用い、
タクシードライバー」から23年後のニューヨークを、スコセッシは恐ろしく巧みに切り取ります。
撮影当時は既に離婚していたというニコラス・ケイジパトリシア・アークエットの二人が
「これから始まるかもしれない二人」感を絶妙に表現していて、あぁ俳優ってやっぱりスゴイのね、と改めて思ったりします。


総じて言えば「カウチしながら観たけど、ちょっと色々考えさせられちゃったかな」ってぐらいのユルイ鑑賞法が
この映画には適していると思うのです。コメディですから、コレ。


これを書くためにDVDを再見しましたが、救命士仲間を演じるヴィング・レイムスとの絡みが異様に面白く
やはり傑作だなぁ、と再認識しました。


というわけで、駄文にて失礼を致しました。
次は我が心の師「id:samurai_kung_fu」さんにバトンを渡したいと思います。よろしくお願いします。