「 しあわせの法則 」を観ました。


脚本の学校に通っていた時に、こんな事を教わった事があります


「優れた脚本のほとんどは『トンネル型』か『ビーカー型』に分類される」


詳しく説明をしますと「トンネル型」というのは仮にトンネルの入り口を「A」、トンネルの出口を「B」とします。物語の始まりで「A」を出発した主人公が、トンネル(様々な事件、出来事)を通り抜け「B」に辿り着いた時、トンネルを通過するという事によって心境の変化などを経験し、「A」と「B」では同じ人物でありながら微妙な変化を遂げている。これが「トンネル型」に分類される物語です

次に「ビーカー型」。これは仮に「人物A」と「人物B」が、物語の発端で既にビーカーの中に居ると仮定します。そこへ「人物C」が、ビーカーの中へ新たに投入される。これによって起こるそれぞれ人物の関わり方を通じて、そのビーカーの中身が最終的にどういった物質に変化するか。これが「ビーカー型」に分類される物語です

そして、ほとんどの優れた脚本は、この「トンネル型」と「ビーカー型」を併せ持っている、とも言えるのです

「しあわせの法則」は、ふとしたキッカケで同居することになる親子が、その一つ屋根の下での暮らし(トンネル)を通して、自由奔放な音楽プロデューサーの母親とその彼氏、精神科医を目指す母親の息子とその彼女、彼ら4人の心境の変化(ビーカー)を丁寧に綴った、まさに上記の「トンネル&ビーカー」の型を併せ持つ作品と言える訳なのです

お話的にはどうってことない内容なのですが、それは全編に「抑えて抑えて」というニューシネマテイストが漂っているせいでしょう

音楽的にも注目すべき点が多く、オープニングタイトルで流れるのはマーキュリー・レヴの書き下ろしだったり、劇中の母親の彼氏が率いるバンドには、何と「フォーク・インプロージョン(!)」の面々を配していて演技をするルー・バーロウを拝むことが出来ます

画像のシーンはちょっと涙ぐんでしまうほど良いシーン。愛すべき小品といった感じで、非常に自分好みの映画でした