「ジョゼと虎と魚たち」を観ました。
まず「身障者不思議ちゃんと大学生の恋愛物語」なんて言うと、もうその時点で拒否反応を起こす人が多々いることでしょう。しかも、主演を張るのは池脇千鶴に妻夫木聡という二人。このキャスティングから「おざなりなユル〜い偽善映画なんだろうな」と観る前は思っていました。
ところがいざ映画が始まると、自分の認識がいかに偏見に凝り固まったものであるかを思い知らるハメに…。妻不木クンはセフレとベッチョリと音を立ててディープキスし、池脇千鶴はその幼児体系な裸体を惜しげもなく晒すのです。つまりはこの映画のマジ加減を突きつけられたのでありました。
しかし、この映画はただあけすけなだけではないのです。魅力的な脇キャラも配置しオフビートな笑いを織り交ぜ、小ネタとして伏線も張りつつ、観客をグイグイと引っ張って行くのです。
池脇演ずるジョゼの関西弁が非常に魅力的です。「してもいいよ」と「してもええよ」。「いいよ」と「ええよ」でこれほどにも印象が違うものか、と改めて言葉の持つ力の大きさを実感しました。
「こわれもの」として扱われてきたジョゼが終盤に自ら語る絶望は果てしなく深い。しかしその絶望を関西弁というオブラートで包みつつ、ひとり電動車椅子で歩き続けて行く事を決心したジョゼ。ラストカットが暗転し、くるりの「ハイウェイ」のドラムのカウントが入ってくる瞬間に憶えた感情を、おそらく私は永遠に忘れないでしょう。
レイトショーで観た後、閉店間際のツタヤに滑り込んでサントラを購入しました。