デヴィッド・レーヴィット「ファミリー・ダンシング」

ファミリー・ダンシング (河出文庫)
デイヴィッド・レーヴィット 井上 一馬 David Leavitt
河出書房新社
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少し前に読んだ「サバービアの憂鬱(→感想)」で紹介されていた、米作家23歳のデビュー作。「サバービアの憂鬱」では「13章 中流の生活を見つめるミニマリズムの作家たち」「23章 ゲイの浸透と新しい家族の絆」という二つの章で取り上げられていました。
「若さ」「自らのセクシャルマイノリティ」といった気負いを若干感じつつも、20代前半でこの燻し銀の名探偵のような洞察力はどうだ!と唸りたくなるぐらい、人間観察に長けた短編が6本収録されています。
母親にカミングアウトする息子の話(「テリトリー」)と、父親が息子にカミングアウトする話(「犠牲者」)が対になっているような感じがして、非常に興味深いです。その2編はもちろん、80年代における「生き辛さ」の表明が様々なヴァリエーションで紹介されていきます。訳者後書きで、レーヴィットのこんなコメントが紹介されていました。
「ポリスの歌に『Don't Stand So Close to Me』というのがあるでしょう。ほかの世代の人間があんなタイトルのヒット曲を生み出すと思いますか?」
この時点で結構なドン詰まり感が受けて取れますが、これより更に下の世代はどうなっちゃってるんだろう?という疑問の答えはミランダ・ジュライの初短編集「いちばんここに似合う人」にあったような気がします(こちらも後日感想を書きます)。
本作収録の「巣立ち」「失われた別荘」という短編では、別荘/別宅が舞台になっていて、こういう「離れて暮らす家族が、季節毎の休暇や冠婚葬祭などである邸宅(大抵は元の生家)に集まって、そこで小事件が起きる」っていうお話しは、小説や映画などで割と定型としてあるなぁ、と思いました。
 

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